日本画に欠かせない胡粉!具体的な使い方、種類などを、元日本画専攻の主婦が解説

胡粉身近なアート

千数百年前に、中国や朝鮮を渡って伝えられた日本画。

長い伝統を引き継ぐ絵画様式は、天然の素材によって描かれています。

その美しく繊細な顔料のひとつ、胡粉。

下地から仕上げ、マチエールまで幅広く多用する、重要な絵の具です!

マチエール(仏:matiere)とはフランス語で物質、品質、質を指します。 絵の具の材質と使用状況からなる絵肌の調子という意味で使われます。

マチエールとは? – 絵肌で変わる表現や個性より引用

今回は、日本画の胡粉の使い方などを中心に解説しています。

日本画の絵の具を扱う作業は、お料理と似ているんですよ♪

お料理が好きな方には楽しい作業かもしれません!

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胡粉は貝殻で作られる顔料

牡蛎

胡粉は、貝殻でつくられる白色系の顔料です。

おそらく天平時代に、様々な顔料と共にシルクロードを通って中国から輸入されてきたといわれています。

西方を意味する「胡※」の国から輸入されたことから、胡粉と呼ばれるようになりました。

※胡(こ)・・・ペルシャ(現在のイラン)

現在の胡粉の材料は、牡蛎、帆立などの貝殻です。

奈良時代頃から鎌倉時代までは、鉛白(えんぱく)の事を胡粉と呼んでいました。

日本画の絵の具以外にも、日本人形や木工品の制作などにも幅広く使われています。

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日本画に欠かせない胡粉の存在

日本画は千数百年の長い歴史の中で大きく変化しながら継承されてきましたが、岩絵の具などに膠を混ぜて描くという、基本的な部分はそのまま受け継がれてきました。

日本画は、箔などの金属の材料も画材として用いて、独特の絵画様式を生み出しています。

今日では、人工的に様々な色の絵の具を作り出すことが可能になりましたが、昔は天然岩絵の具にはない色を、天然の染料を顔料に加工して用いていました。

その中でも胡粉は、ある程度昔の製造工程のまま、継承されてきた素材の一つです。

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胡粉を溶くために用意するもの

胡粉

●胡粉

●水

●膠液(※)

●膠液をすくうスプーン

●乳鉢

●絵皿

あると便利なもの

●エプロン

●ぞうきん

●新聞紙

●ラップ(乾燥防止)

アトリエではないところで作業する場合は、新聞紙やビニールシートを敷くと、後々掃除が楽です!

(にかわ)・・・古くから伝統的に用いられている接着剤の一つ。

日本画の顔料を基低材に接着させたり、ミョウバンと混ぜて滲み止めなどに用います。

主に牛や豚、兎の皮や骨、腱などから抽出。

手工業と、工業的に生産されたものの、二種類があります。

水を加えて加熱して溶かして使用します。

不純物を除いて精製したものが食用ゼラチン。

膠の種類→三千本膠、粒膠、鹿膠、兎膠など

美大では主に三千本膠を使うことが多いのですが、製造中止になったと聞いたので心配です…。

ちなみに、透明感があってよく定着するので、私は鹿膠が好きでした。

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胡粉の溶き方

①乳鉢に必要な量の胡粉を入れます。

胡粉

下地の場合は多めに、細かい場所の場合はそこまで大量に入れなくても間に合う場合が多いです。

(作品の規模と個人差によります。)

②乳棒で、細かくすり潰します。

胡粉

丁寧に空擦り(※)をするほど、発色が美しくなります。

③下地などのために、大量に胡粉を練る必要がある場合は、そのまま乳鉢の中へ膠液を少量ずつ加えます。

少しだけ胡粉を溶く場合は、絵皿に空擦りした胡粉を移して、膠液を少量ずつ加えます。

胡粉

一度に膠液を入れてしまうと、胡粉の粒子と膠との絡みが緩くなってしまいます。

④片手でしっかりと鉢を押さえて、よく指で練ります。

様子をみながら膠液を追加して、ひとつの塊になるようにまとめます。

胡粉

⑤胡粉を団子状に丸めたら、乳鉢の底(または絵皿)にたたきつけて、空気を抜きます。

胡粉

「百たたき」と呼ばれる工程です。空気が抜けることで膠と胡粉の粒子がしっかり定着します。

⑥胡粉団子を乳鉢の底(または絵皿)に軽く貼り付けて、ひたひたにかぶるくらいまでお湯を注ぎます。

灰汁を抜きます。

胡粉

⑦しばらく置いてからお湯を捨てて、溶けだした不純物をとりのぞきます。

胡粉

⑧水を少量ずつ加えながら、滑らかに溶きます。

乳鉢の場合は、乳棒で外側から円を描くように擦っていきます。

胡粉

絵皿の場合も、指で同様に溶いていきます。

⑨すべての胡粉団子が溶けて、すこしゆるめの絵の具くらいになったら、好みの濃度にあわせて水で薄めます。

胡粉

一度に大量に使わない場合は、必要な分だけ別の絵皿に分けてから薄めるのがおススメです。

※空擦り・・・顔料を乳鉢でする作業。胡粉、黄土、雲母などの粒子の細かい顔料は、製造過程の乾かす段階で、干し割れて板状の小片になります。

膠と混ぜる前に乳鉢で細かく砕いて粉状にすることで、滑らかに溶くことができて、発色も良くなります。

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胡粉の注意点

日本画

乾燥

日本画の顔料全般は、とても乾燥しやすいです!

絵皿はとくに空気と接する面積が広いため、冬場のストーブの近くなどにいたらすぐに水分がすくなくなってしまします。

なので、席を立つときにはなるべく絵皿にはラップをかけたり、一度に大量に作らないようにしたりと、気を配ることが大切です。

膠抜きができる絵の具は、必ず膠を熱湯で抜いて乾燥させます。

剥落、ヒビ等

胡粉は変色しにくく、安定して定着しやすい顔料です。

しかし、溶き方や塗り方が上手くなかったり、保存する環境が良くない場合は、剥落したり、ヒビ割れたり、カビが発生することがあります。

胡粉などの天然の素材を使用した作品は、風通しが良く直射日光が当たらない場所に保存することをお勧めします。

カビ

胡粉団子や膠などを冷蔵庫に入れたまま忘れられてしまい、いつのまにかカビが発生することもしばしばです。

冷蔵庫を開けた美大生が、「うわ、コロニーが発生してる…」とぼやくのは日常茶飯事…

カビは繁殖しやすいので、他の人の絵の具にうつったら大変です。

アトリエの冷蔵庫は大抵の場合多くの人と共同で使うので、自分の絵の具にはラップの上から油性ペンで名前を書いて、きちんと管理することをお勧めします。

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胡粉を用いた描き方

奥村土牛

大まかには以下の手順で胡粉を使用します。

①パネルの上の小さなごみを、乾いた刷毛などで払う

②下地の場合、大きめの絵皿に溶いた胡粉を用意する

③大きめの絵刷毛を胡粉の液に浸して、よく含ませてから皿のふちで余分な液を切る

④上から下に、左から右に、均一に塗っていく

⑤液が足りなくなったら追加して、乾ききらないうちに一気に仕上げて、ムラを残さない

絵画の着色として使用する場合も、基本的には普通の絵の具と同じ使い方です。

ですが、水と粒子と膠に分離しやすいので、その都度よくかき混ぜて使うのがコツです。

アナログの作業は感覚の世界なので、体で覚えていきます。

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腐り胡粉

胡粉

腐り胡粉(くさりごふん)とは、腐れ胡粉、起き上げ胡粉とも言います。

粒子の粗い胡粉を膠で練って団子状にした後、水中で長期間放置して、膠分を腐らたものを指します。

この胡粉に再び膠液を加えて画面に塗ると、普通の胡粉と違って、乾いてから中央がへこまず、剥落も少ないと言われています。

丹を少量加えることもあります。

今ではあまり耳慣れない技法ですが、桃山時代や江戸時代初期に制作された障壁画の花や雲の盛り上げ彩色などに多用されました。

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盛り上げ胡粉

胡粉

絵の中の部分的に、厚みをもたせるときに使用する胡粉、またはその技法を指します。

胡粉の中に、方解末(※)などを混ぜることもあります。

粒子が不揃いの為、粒子が均一なものに比べて剥落が少ないです。

腐れ胡粉と同様に、桃山時代以降に制作された障壁画の桜や桃の花の表現に多く見られます。

作例→伝長谷川久蔵「桜図」(16世紀)国宝 智積院蔵

※方解末・・・白色系顔料。原石は方解石(ほうかいせき)。

耐光性に優れ、安定しています。よくマチエールを作るときに使用されます。

キラキラとした透明な粒子が綺麗な素材です。

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花胡粉

胡粉

花胡粉(はなごふん)は、貝殻胡粉のひとつ。商品名。

原料にイタボ牡蛎の下の部分(下蓋)を多く用いたもの。

日本人形の顔の下塗りに多用されることが多い胡粉です。

精製度が低いので純白色ではありませんが、粒子が不揃いの為、剥落しにくいという特徴があります。

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【日本画】胡粉の使い方 まとめ

胡粉

以上、日本画の胡粉の種類や使い方などについてご紹介しました。

以下はおさらいとなります。

胡粉は牡蛎などの貝殻を原材料とし、中国から輸入された胡粉は、日本画や日本人形、木工品などに幅広く活用されています。

乳鉢や乳棒などを用いて粉状にし、膠と混ぜて使用。

天然のものなので、扱いや管理が難しいものの、花胡粉や腐り胡粉、盛り上げ胡粉などのバリエーションも豊かで、芸術の分野に欠かせない顔料です。

日本画は、大人の趣味になるのはもちろん、お子様の課題の提出としてもオススメです♪

ぜひ一度、お試しくださいね!

他にも、日本画のことについてご紹介しています。よかったらぜひ読んでみてください。

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