アートで使われる「胡粉(ごふん)」とは?材料や特徴、製造工程などをご紹介します!

胡粉身近なアート

日本画の顔料の一つ、胡粉(ごふん)!

多くの人が「日本画」と聞いて想像するのは、ふわ~っとした中間色の世界ではないでしょうか?

その何とも言えない淡い色の混色などに使われるのが、胡粉。

貝殻を粉末状にした顔料です。

画学生だった私の青春は、「胡粉団子(※)」をひたすら作って終わったといっても過言ではありません…。

そのくらい多用する顔料です!

(※胡粉団子・・・胡粉を絵の具として使用するために、膠と練り合わせて団子状にしたもの。造語かもしれません。)

今回は、日本画の画材の「胡粉」について解説いたします。

画材についての理解が深まると、絵画鑑賞も楽しくなりますよ。

ぜひご覧ください♩

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胡粉の名前の由来

胡粉の名前

白色系顔料の胡粉。

絵画の顔料としての歴史をたどると諸説あるため、定義付けが困難です。

天平時代に、多くの顔料と共にシルクロードを通って中国の西方から輸入されてきたといわれています。

古代の中国と西洋を結んだ交易路。西洋へはが,中国へは羊毛,金,銀,ネストリウス派キリスト教(景教)などがもたらされた。

「シルクロード」コトバンクより引用

西方を意味する「胡(こ)※」の国から運ばれてきたことから、胡粉と呼ばれるようになりました。

※胡・・・ペルシャ(現在のイラン)

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胡粉の材料

牡蛎

現在の胡粉の材料は、海の牡蛎です。

しかし、奈良時代頃から鎌倉時代までは、胡粉とは「鉛白(えんぱく)」の事を指しました。

鉛白は世界中で主流となっていた白い絵の具でしたが、日本では高価であったことと、湿度が高い為、黒く劣化してしまうという理由などで、次第に使われなくなりました。

その鉛白の代わりとなったのが、牡蛎の殻です。

室町時代以降は、貝殻を粉上にしたものを「胡粉」と呼ぶようになりました。

より白い色の度合いが高いものには、蛤(ハマグリ)を使います。

しかし、加工がしやすいのは牡蛎帆立なので、こちらも主な原料です。

どの貝殻も食用になるものと同じですが、様々な場所で、より白い色が出る貝が探し求められています。

補足

 ナカガワ胡粉絵具さんで製造される胡粉は、天然のイタボ牡蛎を原料としています。瀬戸内海天然産で、養殖の牡蛎よりも質が良く、優れた材料になります。

しかし、海の汚染や、収穫にかかる経費などで採算が合わないため、現在では入荷することができません。

他の牡蛎では、イタボ牡蛎ほどの上質な胡粉はできないそうです。

このように、自然環境が悪化することで、画材の原材料が確保できなくなる事例が相次いでいます。

自然環境が汚染されると、日本の芸術文化の衰退に直結します…。

ちなみに、イタボ牡蛎の上の部分と下の部分の混合比によって、上胡粉、並胡粉などと分けられます。

牡蛎の上の部分が多いほど純白に近く、明度が高いです。

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胡粉を作るための製造工程

胡粉の製造

胡粉の製造の為に、「貝殻を焼く」という誤った情報があるそうですが、正しくは「風化」させます。

(焼いて作ったものは、「貝灰」といって胡粉とは別のものです。)

〈大まかな胡粉の製造工程〉

①海から上がってきた牡蛎などの貝殻を、屋外に積み上げて、天日にさらします

数ヶ月から、10年以上風化させることで有機物が分解されて、黒板のチョークのようにもろくなります。

ここから胡粉の製造が始まります。

③ドラム缶のような貝車という研磨機に貝殻を入れて、ぐるぐると回します。

貝殻同士がぶつかることで、表面の不純物が取れていきます。

④ある程度研磨したら、人の手で他の貝や石などを取り除いていきます。

⑤ハンマーミルという機械を使って、2~3mmほどに粉砕して、粉状にします。

⑥中粉砕機(銅突)でさらに粉砕して、5ミクロンまで粒子を均一に整えます。

きなこくらいの細かさにします。

⑦水を加えてよく練って、石臼のような機械でごりごりと挽きます

抹茶やコーヒーのように引いていくのですが、胡粉の場合は水を加えることが大きな特徴です!

水を加えることで、粒子の大きさによって自然と分けられていきます。

臼で引かれた胡粉は、下の水槽に落ちていきます。

回転している上臼には「すらし」という攪拌錘がつけられていて、水槽に落ちた胡粉をかき混ぜます。

⑧この作業を何日も繰り返して、最後の沈殿槽に沈んだものをくみ上げます。

乾燥させて、胡粉の完成です。

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胡粉の特徴

胡粉

胡粉の白い色は、やわらかくあたたかい色味だと言われています。

胡粉そのものは抜けるような白さなのに、溶いて塗るとマットであたたかい素朴な風合いになります。

とても神秘的な素材です!

具としての胡粉

胡粉はまず下地に使うことが基本ですが、中間色にするための混色の材料として、「具材」⇒「具」とも呼ばれます。

墨と胡粉を混ぜた時→「愚墨」

朱と胡粉を混ぜた時→朱の具

(朱(しゅ)・・・赤色系顔料。水銀と硫黄を人工的に合成してつくる。)

丹と胡粉を混ぜた時→丹の具

(丹(たん)・・・橙赤色系顔料。鉛丹ともいう。)

日本文化に根付く胡粉

胡粉は、日本画だけではなく、日本人形(ひな人形、博多人形、伏見人形等)や、木工品等の絵付けにも使われています。

職人の腕によって、何度も塗り重ねて作る独特の白い艶は見事です。

日本人にとっての胡粉の白さは、実は昔からなじみのある「白」なのです。

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胡粉を扱うときの注意点

基本的に胡粉は、変色がなく安定しやすい顔料ですが、溶き方や塗り方、保存する環境によっては剥落したり、カビが発生することがあります。

胡粉を使用した作品は、風通しが良く直射日光が当たらない場所に保存することをお勧めします。

なるべく額装したり、ケースに入れたりして、時々虫干しすると長持ちします。

作品の上にはホコリがたまりやすいので、こまめにハタキをかけるのも良いですよ。

さらに防虫剤もセットで置いておけば完璧です!

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胡粉で有名な画家 奥村土牛

奥村土牛

胡粉を使った日本画のわかりやすい例として、奥村土牛(おくむら とぎゅう)という現代日本画家をご紹介いたします。

大器晩成の画家として有名な人です。

奥村土牛

1889年(明治22年)2月18日 東京府東京市京橋区南鞘町生まれ。1990年(平成2年)9月25日没。

なんと101歳で亡くなるという、とても長寿だった画家です。

名前に「牛」がはいっているのがユニークで印象的ですよね。

雅号である「土牛」は、土牛がたまたま丑年生まれであったこともありますが、出版社を営んでいた土牛の父が、「寒山詩」の一節『土牛石田を耕す』という一文を引用して名付けました。

黙々と純粋に画業に励む息子の姿を牛に重ね、いつか美しい畑を耕してくれることを願っての命名なのでは、と言われています。

それまでは本名の義三と名乗っていました。

明治38年、16歳で絵画の修業を始め、梶田半古、小林古径、速水御舟などの著名な画家の指導を受けながら、日本美術院に初入選したのは昭和2年38歳の時です。

そして画家としての評価が決定的となったのは、第一回帝展で「鴨」という作品が推奨第一位を受賞した昭和11年47歳の時。

土牛は、雅号の「牛」という字のが表すように、荒れ地を根気強く耕し、辛く厳しい孤独な道を歩み続け、晩年に大きく成功したのでした。

奥村土牛の作品の特徴

文化勲章を受章している土牛は、淡い色調の代表作を数々世に送り出しています。

シンプルで、無駄をそぎ落とした構図が多く、モチーフの白い部分が印象的な作品が多くあります。

例えば、波、雪山、白い花、踊り子の衣装、うさぎの毛並み、鳥の羽根など。

その繊細な白い輝きの表現は、胡粉を刷毛で百回以上も重ね塗りをして生み出されたと言われています。

実は、胡粉を何回も塗り重ねることは、ものすご~く難しい技術です!

なぜなら、胡粉は非常に細かい粒子の為、厚い層になるほど一気に割れてしまうからです。

私も白を基調にした作品が好きなので、胡粉をよく使いましたが、時間が経つと亀裂が入ってしまうことがしばしば…。

なので、微妙な膠や水の調整、気温や湿度、素材の変化などにも気を配らないといけません。

奥村土牛の技術の高さは本当にすごいのです。

特に有名な作品

・富士山図(「富士」とも呼ばれる) ※皇居に飾られています。

以下、院展出品作品

・鳴門

・鹿

・醍醐

・閑日

絵画の本当の良さは、実物を見なければ分かりにくいですよね。

ぜひ長野県にある奥村土牛記念館や、東京の山種美術館に足を運んでみることをオススメします♪

桜を描いた傑作「醍醐」は必見です!

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主な胡粉の価格

胡粉に限らず、画材の価格には変動があり、購入する場所によっても違ってきます。

特に日本画は天然素材を用いることが多いので、廃盤になる素材も多くなってきました。

なので、なるべく多くの購入先を調べて、セールなども活用するのがおススメです☆

美大の画材屋、街の画材屋などいろいろありますが、私が学生の頃はネットが一番安いという声が多かったです。

美大を卒業した人たちが、画材をメルカリラクマなどにまとめて出品していることもあるので、のぞいてみても良いかもしれません。

胡粉の価格の一例

・吉祥 胡粉 盛上胡粉 500g 

メーカー希望小売価格¥1,012 (税込)

・白狐印 粉末 胡粉 500g

¥1,100 (税込)

・吉祥 胡粉 白雲印 500g

¥2,783 (税込)

・白狐印 飛切 胡粉 150g

¥2,200 (税込)

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【日本画】胡粉(ごふん)とは?特徴や製造方法などのまとめ

以上、胡粉についてご紹介いたしました。

天平時代にシルクロードを渡ってきた胡粉。

貝殻を丹念に加工して生み出す顔料は、扱いや保存が難しいものの、古くから世界中の芸術や工芸で活用されてきました。

一般には殆ど知られていませんが、文化を陰で支え続けてきた大切な顔料の一つです。

残念ながら、日本画はどんどん衰退していく一方…。

ですが、胡粉を使った新しい製品は日々開発され、日本画に熱心に取り組んでいる若者がいることも事実です。

もっと日本が、芸術と自然保護に目を向ける傾向になってほしい…

と切実に思います!

他にも、日本画のことについてご紹介しています。よかったらぜひ読んでみてください。

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