時々耳にする「日本画」!
「日本画」という言葉を知っていても、一体どんな絵なのか想像できる人は少ないかもしれません。
私は日本画を専攻していたので、よく
「日本画って水墨画なの?」
と聞かれたりもしました。
もちろん、それとは別々のものです!
水墨画(すいぼくが)とは、唐代に成立したとされる墨で表現される墨絵(すみえ)の一様式。
「水墨画」Wikipediaより引用
今回は、日本画の概要などをご紹介いたします。

美大を卒業してから数年たっているので、今の時流と多少違うところもあるかもしれませんが、何かお役に立てましたら幸いです!
日本画とは?

日本画という言葉自体は、明治時代に西洋画にたいして作られた言葉です。
今日においての「日本画」とは、主に岩絵具、水干、筆、墨、和紙、絹などの天然素材の材料や技法を用いて描かれた絵画、と広く解釈されています。
そして現代では、天然素材だけではなく、自然界にはない顔料も日々新たに作られています。
二通りある日本画の概念
・伝統的な日本の絵画を総称する意味
・伝統的な日本の絵画技法を継承しつつ、西洋技法も取り入れた新様式の絵画を総称する意味
明治時代の日本の絵画は、流派同士の影響によって個々の特色が薄くなり、また、西洋の技法の導入によりその固有性が問われていました。
日本の伝統的な絵画の存続と、より新しく発展するために、岡倉天心や狩野芳崖、フェノロサが新日本運動を促進。
この新日本運動は、日本画が継承されるうえで大きな意義をもたらします。
写生をとくに重視する円山・四条派は、西洋の画法を取り入れることに大きな抵抗はありませんでした。
個人の雑感
実際に日本画の世界に関わると、「日本画という概念」にも様々な意見がある印象です。
「そもそも『日本画』といっているのは日本人だけで、世界では『東洋画』といっている。
海外から流れてきた画法なのに、日本で独自に発展したように広まっているのは恥ずかしい。」
という意見も、東京の画廊の人から聞いたことがあります。
基本的な日本画の技法

いきなり日本画を描こう!と思っても、なかなか難しいですよね。
一番早いのはカルチャーセンターの日本画教室に行くことですが、気になるのは月謝の高さ。
画材屋さんでは、「初心者向けの日本画キット」というものが販売されているので、気になっている方にはオススメです♩

それではさっそく概要のご説明をいたします!
1.絵にしたいモチーフを決める

初心者の人には果物や花がおススメ
基本的には何を描いてもOKです!
ですが、絵を描くことにとまどいがある初心者の方には、果物や花などがオススメです。
普段じっくり見ることがない自然のもの、風景などを観察しながら絵を描くのは、心が落ち着く良い時間です♩
いきなり大作を描くのはハードルが高い
いきなり抽象画や人物画などの大作に挑もうとすると、途中で嫌になってしまう人が多いので、あまりおすすめできません。
カルチャー教室に行くと、カリキュラムの都合でいきなり人物画などに挑戦する可能性もあります。
それで困っている人を見たことがあります。
事前に先生に相談して、まずは小さめの簡単なものから始めたいと伝えてもいいかもしれません☆
2.スケッチをする

大まかなスケッチに必要なもの一覧
※人それぞれの好みによって使うものが違ってきます
・鉛筆(文房具屋にあるものではなく、画材屋にあるものがおススメです。)
・色鉛筆
・水彩絵の具
・パステル
・カッター
・練り消し
・スケッチブック
・カメラ(基本的には使わない方がいいのですが、あると便利です。)
・色鉛筆、パステル、水彩絵の具など
モチーフをよく観察して描きます。
もしもじっくり腰をすえて描ける状況であれば、椅子とイーゼルを用意して、姿勢を正して描くのが一番正確に描けるのでオススメです。
スケッチブックを腕で支えなくて済むので、疲れにくくなります!
3.小下図を作る

スケッチが終わったら、小下図を描きます。
下図とも言います。
小下図とは、日本画で本画制作にあたり、画想をまとめるために書くもの。
絵の完成形を小さく描いたものです。
ここで、構図や配色などを細かく構想していきます。
パネルのサイズをモチーフの大きさにあうように考えることも必要になります。
制作に取り掛かる前のポイント
忘れがちですが、個人的には「どこに何の目的で飾るか」までを考えておいた方が、後々楽だと思います。
デジタルの絵と違って、制作した後、作品を置く場所は重要です。
日本画は天然の素材を使っているので、風通しがよくて直射日光に当たらない場所に保管することをオススメします!
私の実体験ですが、日本画の管理は作品が大きくなるほど大変です。
大きい作品を実家に置いているのですが、こまめに虫干しをしないとホコリをかぶってしまいます。
あまり夢のない話になってしまいますが、「ある程度の大きさの作品は管理をするのが大変かもしれない」ということも頭に入れつつ、計画的に描くことをオススメします。
4.大下図を作る

本画と同じ大きさの大下図(本下図ともいう)を作ります。
大きな模造紙をパネルに軽く貼って、輪郭線や細部まで描きます。
大きなサイズで描くと、スケッチの足りない部分などもわかってきます。
作品のクオリティに直結するので、時間をみつけて、書き足しにいくことをお勧めします。
5.和紙をパネルに水張りする

パネルのサイズより大きめに和紙をカットして、大きな絵刷毛で水を含ませて、よく伸ばします。
パネルの端の側面に、でんぷんノリを2周、塗ります。
1度目は木に吸収させるので、2回塗る必要があります。
大きな作品の場合、他の人に手伝ってもらいながら、パネルに和紙を乗せます。
小さければ、和紙の端とパネルの端を合わせて、倒して、和紙とともに持ち上げれば簡単にはりついた状態になります。
あとは側面のノリとくっつけるように伸ばしがら、ピンと張ります。
最初に、木のパネルに模造紙を水張りしてから、和紙を水張りするのもオススメです。
木のやにが和紙に沁み込まないようにするためです。
5.転写する

大下図を、本画制作のために、和紙を貼ったパネルに写します。
転写には透き写しや念紙、トレーシングペーパーなどを使います。
トレーシングペーパーはくっきりとしすぎていると感じ場合は、和紙と水干絵の具などを用いて、捻紙をつくるのもオススメです。
捻紙は石、土壁、板、厚手の和紙などの透けない性質の素材に転写するのに適していると言われています。
6.骨描きをする

転写した絵の輪郭線を墨などで引きます。
「骨」とは、輪郭線を指しています。
最後まで残す線ではないのですが、ただなぞるのではなく、また新たに描く気持ちで線を引いていきます。
7.地塗り(下塗り)をする

画面全体の下地を整える場合には、地塗りとも言います。
上に重ねる色との響き合いを考慮して、着色する色彩のことを指します。
大まかには、まずはパネルに刷毛で胡粉を塗ったあとに、水干で下地になる色を全面的に塗ります。
はじめから、色々な色でグラデーションをつくるときもあります。

日本画の顔料は粒子があるので、上の層の彩色層から下の層の彩色層が透けて見えます!
その特性を生かした色彩感覚が必要になってきます。
8.本彩色する

または著色(ちゃくしょく)、着色。
さらに専門用語になると、設色(せっしょく)、傅色(ふしき)、施色(せしき)、賦彩(ふさい)などとも言います。
国の重要指定文化財の記述は著色の字を用いますが、それ以外の作品については著色、着色、どちらでも用います。
様々な技法がありますが、基本的には膠で岩絵の具を溶いて、色をのせます。
粒子の層を壊さないために、細かい粒子の岩絵の具から、荒い粒子の岩絵の具、という順序で使用します。
普通の絵の具というよりは、「砂絵」という感覚で、地層を積み重ねていくイメージで彩色していきます。
日本画を描くときの注意点

繊細な画材を扱うので、注意しなければならないことはたくさん…

でも、大体以下の点に気をつけていれば大丈夫です!
・膠液は腐りやすいので、冷蔵庫で保管して早めに使う
・筆はとてもデリケート。傷みやすいので、毎回しっかり洗い、吊るして風通しの良いところで乾かす
・岩絵の具は砂状なので、流しに捨てると詰まります!
岩絵の具は基本的に捨てないで、膠抜きをして再利用します
日本画で使用した筆やバケツには微量な岩絵の具がついているので、基本的に自宅の流しは使わない方がいいです
・鉛筆をカッターで削るときや、三千本膠を割るときは、ケガに注意
・作品をすぐに乾かそうとしてドライヤーを使用すると、割れやすくなります
時間配分を考えながら作業をして、自然乾燥させるのがオススメです
日本画は趣味としてオススメ!

上記でご説明した日本画の概要は、奥深い日本画の世界のほんのさわりの部分。
日本画というと高級なイメージがあって嫌煙されがちですが、デパートの展示会や、美術館や博物館、個人美術館では頻繁に展示が行われています。
無料のイベントもあるので、意外とお金をかけずに身近に感じることもできますよ。
日本画を始めるメリット

日本画は、本格的に取り組もうと思えば、時間もお金もかかるもの。
なので、まずは簡単にできるところから小さく始めるのがおススメです。
身近な生き物を写生するだけでも、みえる世界が変わるはず。
野に咲く小さな花ひとつとっても、命の輝きは美しいと教えてくれます。
日本画はこんな人におススメ
・日常がつまらないと感じている
・自己表現をしたい気持ちが湧き上がってくる
・絵を基本から学びたい
・自然や動物に触れるのが好き
・毎日騒々しい環境にいるので、ゆっくり自分と向き合いたい
・手を動かして作業することが好き
アートで癒されよう
絵画の道を究めようと思えば、芸術的な感覚、対象を観察する力、じっくりと取り組む忍耐力など、さまざまなことが身に付きます。
何かを生み出すことは容易ではない、ということを知るためにも、アートというのは重要な分野です。
それから、自然の中に身を置いてスケッチに励むことは、心身のリフレッシュになります。
充実しているのに、心になにか物足りなさを感じている方には、特にオススメですよ。
画家たちが人生をかけて描いた作品は、あなたの心の声を代弁し、言葉にすることのできない深い感動をもたらしてくれるはずです。

ぜひ一度、カルチャー教室や美術館などに行ってみてくださいね。
心の癒しを感じる作品と出会えるかもしれません♬
他にも、日本画の画材の事などについてもご紹介しています。よかったらぜひ読んでみてください。
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